うまくいかない仕事、林業

森づくりに答えはない。それでも悩みながら未来へつないでいく。

林業は、木を伐って植えればそれで終わりというものではありません。
森林の状況、環境の変化、獣害、木材価格、所有者との調整、人材育成…。
林業の現場には、すぐに答えの出ない課題が数多くあります。
それでも日々悩み、考え、判断をしながら森に向き合い続けるのはなぜか。
高島市森林組合で働く職員たちの声から、その仕事の本質に迫ります。

森林整備課長 清原 猛史

 森林施業プランナーの仕事には、明確な正解がありません。目の前の森林でどのように施業が最適かは、人によって判断が分かれることも多く、日々悩みながら向き合っています。最近は後進の育成も難しさを感じています。調査の手法や知識は教えられても、「この森にどのような手入れが必要か」という判断は、一人ひとりが現場で経験を積みながら身につけていくしかないからです。正解を教えられないもどかしさがあります。その一方で、だからこそ林業の奥深さでもあると感じています。
 また、施業が完了した後も、自分の判断が本当に正しかったのか反省することがあります。所有者から「伐り過ぎではないか」「作業道の位置はこれで良かったのか」といった意見をいただくこともあり、一つの施業に対してさまざまな価値観が存在することを実感します。行政の補助制度や森林の現状など、様々な判断基準はありますが、絶対的な答えはありません。それでも仕事を続けるのは、山を託していただく所有者の思いに応えたいからです。「ありがとう」と声を掛けていただけた時には、この仕事の意義を改めて感じます。先祖代々受け継がれてきた山を次の世代へつなぐ一助となることに、大きなやりがいを感じています。

森林整備課森林施業係 技師 宮田 泰成

 森林施業係として最も悩むのは選木の作業です。主たる作業である搬出間伐では一定の間伐率基準に基づいて作業を進めますが、実際の山は斜面の状況や成立本数、枯れ木や風倒木の有無、広葉樹などの侵入状況などがそれぞれ異なり、一つとして同じ条件の森林はありません。そのため、単純な基準だけでは判断できず、「どの木を残し、どの木を伐るのか」に悩むことが少なくありません。また、所有者の山を預かって作業を行う以上、担当プランナーと選木の方向性や目標とする森林の姿について細かく情報共有しながら進めることが欠かせません。間伐の成果はすぐに見えるものではなく、十数年以上後に残した木がどのように成長するかで評価されます。だからこそ日々の社内でのコミュニケーションと現場経験を積み重ねながら、残した木が将来価値ある木へと育つという確かな判断力を身につけたいと考えています。

森林整備課森林施業係長(木材販売担当) 島本 達

 木材販売の仕事は、自然が生み出す一つとして同じもののない木材と、市場のニーズをどう結びつけるかが大きな課題です。樹種や太さ、節や曲がり、さらには伐採時期によって木材の価値は異なり、常に最適な販売先や価格を模索し続けています。所有者の大切な資産を預かる立場だからこそ、その判断に迷うことも少なくありません。
 木材を取り扱う際には、市場価格だけを追えば良いわけでもなく、所有者の思いや将来の森林像も考慮しなければなりません。複合的な判断が求められ絶対的な正解がない中で、より良い選択肢を追い続けることこそがこの仕事の醍醐味です。だからこそ、一本の木が適正に評価され、無事に買い手の手元へ届いた時には大きなやりがいを感じます。悩みながらも最善を尽くす。この姿勢を今後も継続し追求し続けたいと思います。

総務課企画管理係 主事 清水 由美子

 総務課の仕事は、現場に直接立つことは少ないものの、各種契約書作成や木材代の精算、補助金申請などを通じて林業を支える重要な役割を担っています。しかし、自然相手の現場は予定通りに進まないことも多く、日々変化する状況に合わせながら正確に事務処理を進める難しさがあります。そのため各部署との密なコミュニケーションや細かな情報収集が欠かせず、現場を見ない中で全体を支えることへの悩みも少なくありません。
 しかし、地味な裏方仕事に見えるかもしれませんが、現場、プランナー、総務とすべての仕事がつながり、一つの成果として形になった時には大きな達成感があります。未来に向けて、次世代へもつながる森を支えることが、自身の仕事への誇りとなっています。

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 林業は、自然環境や地域社会、市場経済など多くの要素が複雑に絡み合う中で成り立っており、一つの明確な正解がある仕事ではありません。
それでも天候や地形、市場の変化、所有者の思いなど、さまざまな条件の中で判断を重ねながら、一歩ずつ森づくりを進めています。立場や役割が違っても、それぞれが悩み、迷い、考えながら最適解を目指しながら森と向き合っているのです。
 未来の森を次世代へつなぐために歩みを止めない。林業とは、答えのない問いに向き合い続けながら、悩み、迷い、考え、長い時間をかけて森を育てていく仕事なのです。

(組合だより「森と、杣と。」第33号掲載)

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